生産管理システムとは
「生産管理システム」とは何でしょうか?
あなたの会社では、「生産管理システム」を使っていますか?
そして、使いこなしていますか。
「生産管理システム」を、うまく使いこなすことにより「企業間の競争」に勝ち、「売上げ」や「利益」を上げることができます。
生産管理システムとは
「生産管理システム」を日本工業規格(JIS)では、次のように定義しています。
「生産管理を系統的に行うために、生産に伴う現品、情報、原価(価値)の流れを統合的、かつ、総合的に管理するシステム。」
です。
よくわかりませんね。
つまり、
「生産管理システム」とは「最小在庫」及び「最低価格(原価)」で、顧客が必要とする製品の「納期」と「数量」を満足させるシステムです。
前述した、「企業で使用されているシステム」の中の、
- 「生産システム」
- 「製造管理システム」
- 「製造実施システム(MES)」
- 「スケジューリングシステム」
- 「需要予測システム」
- 「納期回答システム」
市販の本やインタネット、販売されている生産管理システムでは、いろいろな範囲で生産管理システムを定義しています。
生産形態、生産方式、企業によって、生産管理が異なっていますので、生産管理システムの範囲も異なっています。
生産管理システムの範囲については、あまり厳密に考える必要はないと思います。
例えば、
「個別生産」では、「生産管理システム」で「原価の管理」をおこなっているものもあります。
「ロット生産」の「生産管理システム」では「原価の管理」まで行っているのは少ないと思います。
いろいろな生産管理システムがあります。
「生産管理システム」の変遷、目的、機能などを説明します。
生産管理システムの変遷
生産管理システムの変遷です。
「生産管理システム」は、かなり以前から存在しています。
そして機能が追加されて現在に至っています。
「生産管理システム」を理解するには、「生産管理システム」の変遷を理解することが重要です。
「生産管理システム」は以下のように変遷してきました。
日本には、昔から存在した生産管理システムです。
- 製番(せいばん)管理システム
- 追番(おいばん)管理システム
です。
そして、海外から次のような生産管理システムが入ってきました。
- 「MRP」(Material Requirement Planning)
- 「MRP2」(Manufacturing Resource Planning)
(本来は、ギリシャ文字の2です。)
- 「SCP」(Supply Chain Planning)
です。
それぞれの概要を説明します。
- 製番管理システム
製造番号を使って管理します。
この製造番号は、受注から原材料、部品まで統一して使用されます。
- 追番管理システム(おいばん)
生産される製品、部品に「背番号」をつけて、その番号をキーにして生産の進捗を管理する生産管理方式です。
- 「MRP」(Material Requirement Planning)
「MRP」とは、Material Requirement Planning(資材所要量計画)とよばれ、「部品表」と「基準生産計画」をもとに資材の所要量を求め、これを基準に資材の発注・納入、出庫をコントロールするシステムです。
- MRP2(Manufacturing Resource Planning)
「MRP2」は、Manufacturing Resource Planning(生産資源計画)と呼ばれ、「MRP」を「生産能力計画」、「人員計画」、「物流計画」まで拡大したシステムです。
これらの生産計画の指示は、すべて中央の計画立案部門から、全工程に同時におし出されていくので、「押し出し方式(プッシュ方式)」と呼ばれています。
「MRP2」は、一般的には「納期」を基準にしています。
- 「SCP」(Supply Chain Planning)
「SCP」は、Supply Chain Planning(サプライチェーンプランニング)と呼ばれ、簡単に言うと、「カンバン方式」をコンピュータで行うシステムです。
「SCM」(サプライチェーンマネジメント)の概念をシステムにしたものです。
トヨタの「カンバン方式」(カンバンシステム)は最終工程からカンバンを使った「引っ張り方式」により、前の工程に順に「使用数量」が連絡され、生産されていきますが、「SCP」ではこの作業を全工程・事業所に対して、コンピュータで計算し最適な結果を出します。
「SCP」は、在庫を最小にするように計画します。
それぞれの詳細については、別ページで説明します。
生産管理システムの目的
「生産管理システム」は「生産計画」を作成するだけではありません。
次のようないろいろな目的があります。
- 在庫の低減
部品・原材料在庫、中間品在庫、仕掛品在庫、完成品在庫などの低減
- 納期遅れの防止
- 生産能力の有効活用
- 生産計画のリードタイム(サイクルタイム)の低減
- 余剰在庫の低減
- 管理費用の低減
手作業の軽減します。
受注と在庫を取り込むことにより自動的に生産計画、原材料・部品の調達計画を作成します。
- 精度の向上
計算ミスなどの低減
などです。
そして、「生産管理システム」には、もう一つの大きい目的があります。
それは、「経営戦略」を満足させることです。
例をあげて説明します。
例えば、
以前の企業の経営戦略では、「市場がある場所に工場を作って生産・出荷する」という戦略だったとします。
このときは、生産工場の生産管理の担当者は、同じ地域の市場の情報で工場の「生産計画」を作ります。
市場の情報も生産管理の担当者へ頻繁に入ってきます。
「生産能力」も自分の工場だけですから融通がききます。
「生産計画」の作成もあまり難しくはありません。
でも、今回、社長が「価格の安い工場で作って価格の高い市場で売る」という戦略を立てたとします。
会社にとっても、利益があがります。
例えば、
「タイ工場」と「中国工場」などの安い工場で生産して価格の高い「日本の市場」へ出荷する場合です。
これは、大変です。
「生産管理システム」は、日本の「受注(注文)情報」を取り入れて、「タイ工場」や「中国工場」の「生産計画」を作成する機能をもつ必要があります。
ある製品の「生産能力」が「タイ工場」で不足するときは、「中国工場」で「生産計画」を作成する機能も必要になります。
このように、会社の戦略を満足させるためには、「生産管理システム」に、必要な機能を入れる必要があります。
だから、「生産管理システム」は、「頭脳」なのです。
「生産管理システム」をうまく使いこなすことにより、「企業間の競争」に勝ち、「売上」や「利益」をあげることができます。
生産管理システムの特徴
「生産管理システム」は、「販売管理システム」や「在庫管理システム」とは異なっています。
「生産管理システム」には、次のような特徴があります。
- 全部の情報を把握することができます。
「販売管理システム」は、「受注の情報」や「出荷の情報」「完成品在庫」しかわかりません。
「工程管理システム」では、「製造の仕掛品在庫」しかわかりません。
しかし、「生産管理システム」には、顧客の「受注」、「需要」、「内示情報」を取り込みます。
「完成品在庫」、「仕掛品在庫」、「部品・原材料在庫」も取り込みます。
全部の情報が「生産管理システム」に入っています。
「生産能力」も入力します。
「製品の生産計画」や「部品・原材料の調達計画」の作成だけではなく、次のようなことも把握することができます。
- 納期の満足度(納期達成率の予測)
- 今後の売上計画、利益計画
- 在庫状況
- 生産能力の過不足
などです。
非常に重要なシステムです。
- 情報のみを取り扱います。
「販売管理」や「在庫管理」、「購買管理」システムは、「物」と「情報」が同時に動くシステムです。
しかし、「生産管理システム」は情報のみのシステムです。
- 今後(将来のわかる)のシステムです。
「販売管理」や「在庫管理」、「購買管理」システムは、実際に行ったことを入力します。
結果(過去)のシステムです。
しかし、「生産管理システム」は、これからの将来(未来)のことを計画するシステムです。
うまく使いこなすことで、「在庫」を最小にして「売上」や「利益」を上げることができます。
- 一部の人が使用します。
「販売管理」や「在庫管理」、「購買管理」システムは、「物」と「情報」が同時に動くシステムです。
製造で作業したときは、作業者は、必ず情報を入力する必要があります。
多くの人が、システムを使っています。
でも、「生産管理システム」は、一部の人(主に生産管理部の人)が使っています。
使いこなすには、経験と知識が必要です。
- バッチ処理です。
「販売管理システム」や、「在庫管理システム」、「工程管理システム」は、作業者が常時システムを使っているため、「リアルタイム」のシステムです。
しかし、「生産管理システム」は、一般的には、「販売管理システム」から、「受注・需要データ」、「在庫管理システム」や「工程管理システム」から「在庫データ」を取り込んで「生産計画」や「調達計画」を作成します。
一般的には、バッチ処理です。
生産管理システムの制約条件
「生産管理システム」の制約条件です。
いくら、りっぱな「生産管理システム」があっても、良い生産計画や原材料や部品の調達計画は作成できません。
いろいろな前提条件や制約条件があります。
大きく、2つあります。
- ひとつは、外部要因です。
- もうひとつは、内部要因です。
それぞれについて、説明します。
■1.外部要因
生産管理システムで作成する生産計画は、
生産計画=販売計画 − 完成品在庫
で計算されます。
生産のリードタイムが長い場合は、製造の仕掛品を考慮する場合、
製造を投入する生産計画は、
生産計画(投入)= 生産計画(出荷)− 仕掛品在庫
になります。
生産計画を正確に作成するためには、「販売計画」「需要・受注」「完成品在庫」「仕掛品在庫」「原材料・部品在庫」などを正確に、タイムリーに把握する必要があります。
システムとしては、「販売管理システム」と、「在庫管理システム」です。
製造工程であれば、「工程管理システム」になります。
非常に重要です。
これらの正確でタイムリーな情報やシステムがないと「生産管理システム」は意味がありません。
■2.内部要因
次に、生産管理システムが稼動するための制約条件です。
- 生産能力情報
設備、人員、治具、工具、金型など
- 歩留まり
正しい、歩留まりを設定しないと、作りすぎや、品切れが発生します。
- リードタイム(サイクルタイム)
製造・調達のリードタイム
- 部品表
- 需要・受注情報
上で説明した内容です。
- 完成品・仕掛在庫情報
上で説明した内容です。
- 品質情報
賞味期限、使用期限
- 物流の情報
輸送、物流、倉庫
などです。
これらの情報により、生産管理システムは影響を受けます。
生産管理システムでは、よく、「ガーベージイン ガーベージアウト」と言われています。
「ごみを、入れると、ごみが出るという」ことです。
正確な、受注情報や在庫情報を入力しないと、正確な、生産計画を作成することが出来ません。
上の情報は、非常に重要です。
●「生産管理システムとは」の関連ページです。
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